【煎茶道部顧問 寺本益英先生からのメッセージ】

 

 関西学院大学煎茶道部の顧問を務めております経済学部の寺本益英です。大学では日本経済史を担当しています。学位論文の研究テーマとして、戦前の日本経済の歩みと重ね合わせ、茶業がどのような役割を果たしたかについて調べたのが、お茶研究の出発点でした。
 その後喫茶文化史と関連づけ、全国の茶産地の振興にも取り組むようになりました。平安時代における伝来以来の喫茶文化史を描いてみて、お茶は単にのどの渇きを潤すだけの飲料ではないことに気付きました。すなわち、歴史性・文化性・精神性など優れた付加価値を備え、日本を代表する芸術文化として発展してきたことがわかったのです。
 お茶研究の重心が経済史的視点から文化史的視点に移ってゆく中で、2005年1月、小笠原秀邦先生との出会いがありました。先生はかねてから私の研究に注目してくださっており、おいしいお茶の淹れ方、マナー、そして日本文化の素晴らしさを若者が実体験できるよう、関学に煎茶道クラブの設立を勧めてくださったのです。
 以後本格的な活動が始まり、早いもので7年近くが経過しましたが、着実な活動実績が大学当局に評価され、2011年12月、関西学院大学文化会「煎茶道部」として認可されるに至りました。
 不景気が長期化し、私たちは心のゆとりや、伝統文化に親しむ余裕を失ってしまいました。経済・社会が活力をなくし、人間関係がうまくゆかなくなったのは、「文化を通じた癒しの喪失」が大きな原因かも知れません。
 煎茶道の世界に足を踏み入れると、人間性が豊かになり、上記のような現代社会の問題を解決することにつながるでしょう。点前は家元宗家の秀邦先生が直々に、順を追って、丁寧に教えてくださいます。その過程で相手を思いやる気持ち、もてなしの心、礼儀作法が自然と身につくのです。おいしいお茶とともに和菓子を楽しむこともでき、一石二鳥です。稽古を重ねるごとに気品が出てきて、誰もが好感をもって接してくれるに違いありません。
 部員の人数はそれほど多くないので、行き届いた指導が受けられます。またメンバーのまとまりは大変よく、全員楽しそうに生き生きと稽古に励んでいます。お茶会、懇親会、ミニ旅行などイベントも行われ、活動の充実度や結束力では、他のどのクラブにも負けないはずです。
 関西学院大学のスクール・モットー“Mastery for Service ”を学業と煎茶道クラブの活動で実践してみてはどうでしょうか。きっと後悔のない大学生活を送ることができます。みなさんと一緒に活動できることを楽しみにしています。

 

【プロフィール】

寺本益英(てらもとやすひで)
 1967年三重県上野市生まれ。2007年より関西学院大学経済学部教授。経済学博士(関西学院大学)専攻は、日本経済史、フードシステム論。
主要業績
 『戦前期日本茶業史研究』有斐閣,1999年.『緑茶の事典』(共著)柴田書店,2000年.(2002年に新訂版、2005年に改訂3版) 『トピックスで学ぶ日本経済史』晃洋書房,2001年.『景気循環でみる戦前の日本経済』晃洋書房,2003年.『社会経済史講義』学文社,2004年.『茶大百科』農山漁村文化協会,2008年.(第1巻 歴史・文化/品質・機能性/品種/製茶 に分担執筆 )など。
 現在、国土交通省近畿地方整備局 はなやか関西~文化首都年~2011 「茶の文化」実行委員会アドバイザー 、京都府 日本茶・宇治茶の世界文化遺産登録可能性検討委員会調査研究部会部会員を務める。
 ホームページアドレスは下記のとおり。

 http://blog.livedoor.jp/kgteramoto/